2026年9月5日

Cafe UBA 徹底解説!

Producer Story — Café Uba

「Café Uba」という名前は聞いたことがあっても、実際にどんな生産者で、どんな発酵をしているのかまでは知らない──そんなロースターの方も多いのではないでしょうか。2023年のワールドバリスタチャンピオンシップでは、Café Ubaの豆を使用したブレンドが準優勝を獲得し、業界内での注目度は年々高まっています。

Café Ubaを一言で紹介するなら、「科学的な発酵管理を武器にする、コロンビアの生産者グループ」です。単に変わったフレーバーを狙っているのではなく、品種ごとの特性を理解した上で、発酵条件を再現可能な形で設計している点が、他の実験的精製と一線を画しています。この再現性の高さは、安定した仕入れを重視するロースターにとっても重要なポイントです。

この記事では、haiz coffee importが次回取り扱う特殊系8ロット──April、NIU、NG、Logan、SAKURA、Caturra Nitro、Geisha Bio、Sudan Rume BIO──を通じて、Café Ubaという生産者の技術体系を、仕入れ検討の参考になるレベルまで掘り下げてご紹介します。

Café Ubaとはどんな生産者か

Café Ubaは、コロンビア・リサラルダ県を拠点とする生産者プロジェクトです。3代目生産者のJulio César Madridと、パートナーのJulio Andrés Quicenoが2014年に設立し、複数の家族経営農園を一つの体制に統合しています。単独の農家では投資が難しいバイオリアクターや精密な発酵管理設備を、複数農園の生産量を集約することで実現している点が、他の小規模生産者との構造的な違いです。

Madridは約5年前からバイオリアクター発酵技術に本格投資し、密閉式タンク・窒素注入システム・温度・pH・Brixの継続モニタリング体制を構築しました。2020年にはロス・アンデス大学との共同研究でこのアプローチが検証されており、経験則ではなくデータに基づいた発酵設計を行っている点は、品質のロット間ブレを気にするロースターにとって安心材料になるはずです。

中核となる農園は以下の3つです。

農園 特徴
Finca Milán 1982年操業。標高1,400〜1,800m。今回の特殊系ロットのほとんどがここで生産されている、実験的プロセスの中心拠点
Finca La Riviera 標高1,700〜1,800m。ゲイシャやSudan Rumeなど、高付加価値品種の栽培・精製を担う
Finca Buenos Aires 1998年操業。嫌気性発酵やハニー、カーボニックマセレーションなども展開

現地で聞いた、Café Ubaが生み出す「次の世代」

いま僕たちは、Café Ubaの現場を歩きながら、Andrésに話を聞いています。そこでまず感じたのは、ここで進んでいることが、単にコーヒーの味を変えるための技術ではないということでした。

Andrésによると、これまでのコーヒー栽培は、地道で、目立たず、肉体的にも厳しい仕事でした。そのため、若い人たちはコーヒー農園を離れ、シティに出て、もっと現代的な仕事に就きたいと考えていたそうです。

ところがいま、最先端の技術がコーヒー産業の現場に入ってきたことで、その見え方が少しずつ変わり始めています。発酵を科学的に設計し、これまでのコーヒーづくりにはなかった工程や段階を加えることで、コーヒーに新しい面白さが生まれたのです。これは、飲む人に新しい味や体験を届けるだけでなく、生産者にとっても、これまでになかった新しい分野を生み出しています。

これまでは、コーヒーの生産現場で考えることといえば、「肥料をどう与えるか」「どの品種を植えるか」といった栽培の工夫が中心でした。そこにいまは、どの微生物を使うのか、どのタイミングで何を加えるのか、温度やpHをどう管理するのかという、発酵に関する新しい知識と技術が加わっています。僕たちがいま現地で聞いているのは、コーヒー栽培の中に、まったく新しい専門領域が生まれているという話です。

さらに、そのプロセスに価値をつけられるようになったことで、コーヒーの取引価格が変わり、生産者の収入にも変化が生まれています。目の前でAndrésの話を聞いていると、発酵技術の進化はカップの中の味だけでなく、生産者が関われる仕事の幅そのものを広げているのだと実感します。そして、その新しい分野が生まれること自体が、次の世代の生産者を呼び込むきっかけになる。そこに、この革新的なプロセスの大きな意義があるのだとAndrésは話していました。

ピカピカにしない理由──ミランに根づく微生物と微気候

もうひとつ、いまMilánのプロセスプラントを見ていて気になったことがあります。最新鋭の機械が並んでいる一方で、設備のすべてがピカピカに磨かれているわけではありません。発酵を行う小屋のような建物も、かなり年季が入っています。

Andrésに理由を聞くと、これは手入れをしていないからではありません。長年の研究から、その場所に昔からいる土着の微生物(マイクロオーガニズム)が、発酵に良い働きをすることがわかっているからだそうです。

プロセスプラントはMilánとLa Rivieraの両方にありますが、そこにいる微生物は同じではありません。Andrésの説明では、La Rivieraにいる微生物を使っても、Milánと同じ味にはならないことが研究で確認されているそうです。

つまり、すべてを新しい設備に替えて、完全に無菌にすればよいわけではありません。Milánにしかいない微生物を含め、その土地にある環境全体──いわばMilán固有のマイクロクライメイト(微気候)──が、この場所ならではの味をつくっています。だからCafé Ubaでは、微生物を排除するのではなく、土地に根づいたものを残しながら、温度やpHなど人が管理できる部分を科学的にコントロールしているのです。

実際にこの建物の前に立ち、最新の機械と年季の入った小屋を同時に見ていると、その考え方がよくわかります。新しい技術だけでも、昔ながらの環境だけでもない。Milánでは、土地に積み重なった時間と最先端の発酵技術が、ひとつの味を生むために一緒に働いています。現地で話を聞いたいまだからこそ、Café Ubaの味は機械のスペックだけでは説明できないと感じます。

Café Ubaの発酵体系を正しく理解する

Café Ubaのロットを紹介する記事の多くは、「Culturing」「Nitro」「Bioreactor」を並列の3カテゴリーとして扱っています。しかし正確には、これらは同じ階層にある概念ではありません。バイオリアクターという発酵設備を土台に、4つの独立した発酵設計方針を組み合わせる、という構造で理解するのが正確です。仕入れ判断やカッピング時の言語化にも役立つので、ここで整理しておきます。

バイオリアクター(発酵基盤) Culturing(複合微生物) BIO(単一在来酵母) Nitro(ガス環境) Co-Fermentation(副原料)
バイオリアクター ── 発酵の「器」

↓

温度・pH・Brixを計測・管理しながら発酵を行う密閉設備。
以下4つの設計方針は、いずれもこの基盤の上で実施されます。

Culturing
複数の在来酵母・細菌種を組み合わせた複合スターターカルチャーに、果物や芳香植物を加えて発酵させる。
制御対象:微生物の種類と構成
BIO
農園内で単離された単一の在来酵母株のみを接種する。
制御対象:品種そのものの表現
Nitro
バイオリアクター内の雰囲気を窒素で調整し、低酸素環境下で発酵させる。
制御対象:発酵槽内のガス組成
Co-Fermentation
フルーツのモストやオイルを発酵槽に追加する。CulturingやNitroに重ねて使われる付加要素。
制御対象:副原料の添加

CulturingとBIOの違いは「複合微生物か、単一微生物か」。Co-Fermentationは単独カテゴリーというより、他の設計方針に重ねがけできるオプションと捉えるのが実態に近いです

実務メモ:仕上げ(Washed/Natural)について
今回の8ロットのうち、Caturra Nitro・Geisha Bio・Sudan Rume BIOはいずれも発酵前にデパルプ済み、つまりパーチメント発酵です。発酵後の「洗浄」はNitroやCo-Fermentationと並ぶ設計要素ではなく、デパルプ済みコーヒーに対する標準的な後処理という位置づけになります。

次回ラインナップ:8ロット

haiz coffee importが次回取り扱う特殊系ロットは以下の8つです。Culturingの要素を含むものが5ロット(April、NIU、NG、Logan、SAKURA)、Nitroの要素を含むものが2ロット(SAKURA、Caturra Nitro)、BIOが2ロット(Geisha Bio、Sudan Rume BIO)という内訳です。SAKURAはCulturingとNitroを掛け合わせたハイブリッド設計で、単独の技術だけでは説明できない8ロット目のユニークな存在です。

ロット 品種 設計方針 標高
UBA April Caturra Culturing 約1,400m
UBA NIU Caturra Culturing 約1,400m
UBA NG Caturra Culturing 約1,400m
UBA Logan Caturra・Castillo Culturing 約1,500〜1,600m
UBA SAKURA Caturra Culturing Nitro Co-Ferm 約1,500m
UBA Caturra Nitro Caturra Nitro Co-Ferm 約1,400〜1,600m
UBA Geisha Bio Geisha BIO 約1,800m
UBA Sudan Rume BIO Sudan Rume BIO 約1,700〜1,800m

Culturingを理解する

Culturing は、複数の在来酵母・細菌種を組み合わせた複合スターターカルチャーに、果物や芳香植物を加えて発酵をコントロールする技術です。デパルプしたコーヒーとフルーツをともに発酵タンクへ入れ、嫌気性環境下で発酵させます。ギリシャヨーグルトの発酵技術がヒントになったとされる技術で、

  • どの微生物を組み合わせるか
  • どの果物・芳香植物を加えるか
  • 発酵時間をどう設定するか

という条件があらかじめレシピ化されています。たとえば後述するNGというロットでは、パイナップルとマンゴスチンのオイル抽出物、選別した複数の微生物を使い、酸素を制限した環境で144時間以上発酵させる、という具体的な設計がなされています。

Culturingを単に「フルーツフレーバーの付加技術」と捉えると、カッピングでの言語化を誤ります。実態は、複合微生物によって発酵環境を設計し、豆内部の香味成分の生成・変化そのものをコントロールする技術です。次項のBIOが単一酵母で品種の個性を際立たせるのに対し、Culturingは複数微生物と果物の組み合わせで新しい香味を構築する──この対比を押さえておくと、8ロット全体の位置づけが把握しやすくなります。

UBA April

品種:Caturra 農園:Finca Milán 標高:約1,400m
バイオリアクター Culturing

カッププロファイル:Peach / Floral / Caramel

発酵の流れ

  1. 完熟チェリーを品質・密度で選別
  2. 発酵済みフルーツと専用の複合スターターカルチャーを、温度管理されたバイオリアクターへ投入
  3. 約36時間発酵。温度制御下でミューシレージのジュースを循環させる
    (※ ジュースを循環させ続けるのは、タンク内で温度や微生物の働き方にムラが出ないようにし、フルーツやスターターカルチャー由来の香味成分を豆全体に均一に行き渡らせるため)
  4. 除湿・温度管理された暗室で乾燥

フルーツはパイナップルと黄桃を中心に使用しております。「Peach → Floral → Caramel」という構成から、Caturraの持つ甘さをベースに果実感と華やかさを引き出す設計であることが読み取れます。ライトロースト〜ミディアムライトでフローラルな酸を活かす焙煎との相性が良いロットです。

UBA NIU

品種:Caturra 農園:Finca Milán
バイオリアクター Culturing

カッププロファイル:Coconut / Butter / Chocolate

NIUはAprilと同じ「Caturra × Culturing」ですが、方向性はまったく異なります。とろけるような甘さとトロピカルな深みが特徴で、取扱店によっては「Co-Fermented」と表記されることもあります。ただしこれはNIUだけの特別な要素ではありません。そもそもCulturingという技術自体が、複合スターターカルチャーに果物や芳香植物を組み合わせて発酵させる手法であり、果物を加える時点で広い意味でのCo-Fermentation的な性質をすでに含んでいます。つまり「Co-Fermented」という表記は、NIUがCulturingに加えて何か特別な工程を採用しているという意味ではなく、Culturingという技術の一側面を強調した呼び方だと理解するのが正確です。

AprilとNIUを並べると、Culturingが単なる「フルーツフレーバーの付加」ではなく、微生物の組み合わせや発酵時間そのものを変数として扱う技術であることが明確にわかります。同一品種・同一農園・同一技術カテゴリーでも、ここまで方向性が分かれる点は、お客様に説明する上でも使いやすい切り口です。

UBA NG

品種:Caturra 農園:Finca Milán 標高:約1,400m
バイオリアクター Culturing

カッププロファイル:Guava / Vanilla / Blackberry

発酵の流れ

  1. 完熟チェリーを選別
  2. パイナップルとマンゴスチンのオイル抽出物、選別した複数の微生物とともに投入
  3. 酸素を制限した環境で144時間以上発酵
  4. 天日でゆっくり乾燥

混合発酵によって酵母・細菌の複雑な代謝反応が引き起こされ、明るくトロピカルなカッププロファイルと、花のような酸味、独自性のある豊かなフレーバーが生まれています。144時間以上という長時間発酵と、パイナップル・マンゴスチンという2種のトロピカルフルーツの組み合わせが、他のCulturingロットとの明確な差別化ポイントです。

UBA Logan

品種:Caturra・Castillo 農園:Finca Milán 標高:約1,500〜1,600m
バイオリアクター Culturing

カッププロファイル:Hibiscus Tea / Cranberry / Melon / Tropical / Sweet

LoganはCaturraとCastilloをブレンドしたCulturingロットです。スターターカルチャーは主にパイナップル発酵由来の酵母をベースにしており、その種類・量・発酵時間の調整によって香味の方向性をコントロールしています。単一品種で仕立てられることが多いCafé Ubaの特殊系ロットの中で、品種をブレンドしている点が珍しい特徴です。

ハイビスカスティーやクランベリーのような赤い酸、メロンのようなみずみずしさ、トロピカルな甘さが特徴で、Culturingが「品種の違いを超えて香味を設計する」技術であることを象徴するロットです。ここまでのApril・NIU・NG・Loganは、いずれもCulturing単体で成立するロットでした。次に紹介するSAKURAは、このCulturingにNitroを重ねた、8ロットの中でもっとも複合的な設計です。

UBA SAKURA

品種:Caturra 農園:Finca Milán 標高:約1,500m
バイオリアクター Culturing Nitro Co-Fermentation

カッププロファイル:Grape / Floral / Citrus

発酵の流れ

  1. 完熟チェリーを収穫・選別
  2. 在来酵母のKazachstania humilisとKazachstania exiguaという2種類の菌を使用
  3. パイナップル・ブラックベリー・桃といった果物とともに、窒素で調整した雰囲気の中で発酵
  4. 発酵後は洗浄し、25日間の天日乾燥

SAKURAは、Café Ubaが「Culturing-nitro」と呼ぶ複合プロセスで作られています。CulturingとNitroという2つの設計方針を同時に採用している点が、今回の8ロットの中でも珍しい特徴です。単一の在来酵母ではなく2種類の菌を組み合わせ、そこに窒素環境と3種のフルーツを重ねることで、微生物の活動と香味の複雑さを高めています。数字上も25日間という長い天日乾燥が、じっくりとした仕上げに寄与しています。

April・NIU・NG・Logan(一部)と同じCaturraという品種を使いながら、CulturingにNitroを重ねるだけでグレープやシトラスを思わせるまったく違う方向へ振れる点が、SAKURAの面白さです。次に紹介するCaturra Nitroと合わせて見ることで、「Nitro」という設計方針がどのように香味を作るのかが立体的に理解できます。

UBA Caturra Nitro

品種:Caturra 農園:Finca Milán 標高:約1,400〜1,600m
バイオリアクター Nitro Co-Fermentation(スイカ)

カッププロファイル:Melon / Watermelon / Caramel

実績:2023年ワールドバリスタチャンピオンシップでイタリア代表が使用し準優勝。競技会での使用実績を求めるメニュー訴求にも活用しやすいロットです。

発酵の流れ

  1. 完熟チェリーを選別・収穫
  2. 収穫直後のチェリーを10〜12時間袋詰めし、内部温度を上げる(embryonic stress)
  3. 8〜10℃の水槽で急冷
  4. デパルピング
  5. ミューシレージ付きのまま10〜12時間、樽内で好気性酸化
  6. 密閉バイオリアクターへ投入し、スターターカルチャーとスイカのモストを添加
  7. 窒素注入により嫌気性発酵段階へ移行
  8. 4〜6日間、温度・pH・Brixをモニタリングしながら発酵
  9. 洗浄
  10. 天日で15〜20日乾燥

好気性の酸化段階を経てから窒素置換による嫌気性段階に移行する二段階構成と、フルーツ由来成分をモストやオイルとして分離・使い分けている点が設計上の特徴です。デパルプが発酵より前に行われるため、工程9の洗浄は独立した設計選択ではなく標準的な後処理にあたります。

UBA Geisha Bio

品種:Geisha 標高:約1,800m
バイオリアクター BIO

カッププロファイル:Lime / Grape / Lemongrass

発酵の流れ

  1. 完熟チェリーを選別
  2. デパルピング
  3. 単一の在来酵母株をスターターカルチャーとしてバイオリアクターへ投入
  4. 約48時間発酵
  5. 洗浄
  6. 天日乾燥
  7. 除湿暗室で水分値を安定化

Geisha Bioは、Geishaという品種そのもののポテンシャル、農園内で単離された単一の在来酵母、バイオリアクターによる精密な発酵管理を組み合わせています。外部からフレーバーを付加するのではなく、Geishaが本来持つ香味を発酵によって引き出す方向性で、透明感のあるクリーンなカップに仕上がっています。ゲイシャ特有のプレミアム感を保ちながら、Culturing系のロットとは異なる訴求ができるアイテムです。

UBA Sudan Rume BIO

品種:Sudan Rume 農園:Finca La Riviera 標高:約1,700〜1,800m
バイオリアクター BIO

カッププロファイル:Blueberry / Maple Syrup / Brown Spices(品種傾向。本ロット固有のカッピングノートは今後の情報更新をお待ちください)

Sudan Rumeはエチオピア・スーダン系統に由来し、コロンビアの一般的な商業品種とは遺伝的背景が異なる、個性の強い品種です。Café UbaではLa Riviera農園で11年以上栽培されており、樹高が高く、種子が細長いといった特徴を持ちます。

発酵の流れ

農園の在来酵母Kazachstania humilisを使用し、品種の風味特性をより際立たせることを目的としたプロセスです。

  1. 完熟チェリーを収穫
  2. デパルピング
  3. Kazachstania humilisをスターターカルチャーとしてバイオリアクターへ投入
  4. 温度と酸度を約48時間モニタリング
  5. 洗浄
  6. 天日で水分値40%まで乾燥
  7. 除湿暗室で水分値11%まで乾燥

Sudan Rume BIOは、Geisha Bioと同じくBIOの設計方針です。単一在来酵母株によって、品種とテロワールのアイデンティティをそのまま引き出すことを目的としており、Sudan Rumeという希少品種の個性を、加工の手数を増やさずに前面に出したいという意図が読み取れます。ゲイシャ以外の高付加価値品種を探しているロースターにとって、選択肢の広がるロットです。

比較で見る、設計方針ごとの違い

8ロットを設計方針・発酵時間・カッププロファイルで並べると、それぞれの立ち位置がより明確になります。

ロット 品種 設計方針 発酵時間目安 カッププロファイル
UBA April Caturra Culturing 約36時間 Peach / Floral / Caramel
UBA NIU Caturra Culturing 非公開 Coconut / Butter / Chocolate
UBA NG Caturra Culturing 144時間以上 Guava / Vanilla / Blackberry
UBA Logan Caturra・Castillo Culturing 非公開 Hibiscus Tea / Cranberry / Melon
UBA SAKURA Caturra Culturing Nitro Co-Ferm 非公開
天日乾燥25日
Grape / Floral / Citrus
UBA Caturra Nitro Caturra Nitro Co-Ferm 4〜6日 Melon / Watermelon / Caramel
UBA Geisha Bio Geisha BIO 約48時間 Lime / Grape / Lemongrass
UBA Sudan Rume BIO Sudan Rume BIO 約48時間 Blueberry / Maple Syrup系(品種傾向)

① April・NIU・NG・Logan ── 同一技術・同一農園でもここまで分岐する

4ロットとも「Caturra中心+Finca Milán+Culturing」という共通条件でありながら、使用する果物・芳香材料・発酵時間の違いだけで、4つの明確に異なるカッププロファイルが生まれています。メニュー説明の場で「同じ技術でここまで違う」ことを示す好例として使いやすい比較です。

② SAKURAとCaturra Nitro ── Nitroを含む2ロットの、設計の複雑さの違い

Nitro要素を持つのはこの2ロットのみですが、設計の組み立て方は対照的です。Caturra Nitroは「Nitro+Co-Fermentation」というシンプルな組み合わせであるのに対し、SAKURAは「Culturing+Nitro+Co-Fermentation」という3要素を同時に採用しており、8ロットの中でもっとも複合的な設計です。2種類の在来酵母(Kazachstania humilisとKazachstania exigua)と3種のフルーツ(パイナップル・ブラックベリー・桃)を窒素環境の中で組み合わせることで、グレープやシトラスを思わせる、他にはない香味の層が生まれています。同じCaturraという品種でありながら、設計方針の組み合わせ方だけでここまで違うカップになる好例で、「Nitroという技術がどこまで表現の幅を広げられるか」がよくわかる比較です。

③ Geisha BioとSudan Rume BIO ── 同一設計方針、品種差の実例

どちらも単一在来酵母によるBIO設計でありながら、Geishaはシトラス・フローラル系、Sudan Rumeはベリー・スパイス系という、まったく異なる方向性を示します。BIOは「フレーバーを添加する」設計ではなく「品種の個性を際立たせる」設計であるため、この2ロットの比較は品種特性そのものを伝える上で有効です。

仕入れ判断のための設計方針まとめ

品種を選ぶ → デパルプのタイミングを決める → バイオリアクターを用意する → Culturing・BIO・Nitro・Co-Fermentationを組み合わせる → 発酵条件をモニタリングする → カップの方向性が決まる

バイオリアクター(発酵基盤)
温度・pH・Brixを計測管理する設備。8ロット共通の基盤。ロット間のブレの少なさに直結する。
Culturing(複合微生物)
複数微生物+果物で新しい香味を構築。代表:April、NIU、NG、Logan(SAKURAはNitroとの複合設計)
BIO(単一在来酵母)
単一酵母株で品種本来の個性を際立たせる。代表:Geisha Bio、Sudan Rume BIO
Nitro(ガス環境)
窒素で発酵環境をコントロール。代表:Caturra Nitro、SAKURA(Culturingとの複合設計)
Co-Fermentation(副原料)
フルーツ由来成分を加える重ねがけ要素。代表:NIU、Caturra Nitro、SAKURA

まとめ

Café Ubaの価値は、「特殊な精製方法を数多く持っていること」自体にあるのではありません。バイオリアクターという共通基盤の上で、Culturing・BIO・Nitro・Co-Fermentationという設計要素を、品種ごとに計画的に組み合わせていること、そしてそれを大学との共同研究まで通じて再現可能な形に落とし込んでいることにあります。

ロースターの視点で見れば、これは「毎回違う実験的コーヒー」ではなく、「狙って作られた、説明可能な差別化商品」だということです。同じCaturraという品種からでも、桃と花、ココナッツとチョコレート、グァバとブラックベリー、グレープとフローラル、メロンとスイカという5通りの表情が生まれ、さらにCaturraとCastilloをブレンドしたLoganがハイビスカスティーとクランベリーという6つ目の方向性を加える──この振れ幅の大きさと、それぞれの背景にある明確な設計思想は、店舗での商品説明やPOP、SNS発信にもそのまま活用できる情報です。

まずはカッピングから、Café Ubaの世界観をご自身の舌で確認していただくのが一番です。気になるロットがございましたら、haiz coffee importまでお気軽にお問い合わせください。