コロンビア南部・ナリーニョ県の山岳地帯に位置するアポンテは、標高2,000mを超える高地にあり、先住民族・インガ族が暮らす特別な地域です。
私たちはこの村で、現地の文化や自然と深く結びついたコーヒーに出会いました。

自然と共に生きるインガ族のコーヒー作り
アポンテのコーヒーの特徴は、まずその標高にあります。
標高が高いため気温が低く、害虫の被害も少ないことから、欠点豆の割合が極めて低くなっています。この自然条件だけでも非常に高品質なコーヒーが育つポテンシャルがあります。
しかし、アポンテの本当の魅力は、そこに暮らす人々の営みにあります。
インガ族は古くから自然と調和した暮らしを送り、月の満ち欠けに合わせて農作業を行ってきました。かつては収穫も発酵も月のリズムに従って行われていたといいます。
現在では、収穫は週のはじめ、乾燥は週末というサイクルが確立されていますが、彼らの文化や感性は今でもコーヒーづくりの中に息づいています。
特に伝統的なハニー製法は、アポンテの代表的なプロセスとして今も大切に守られています。

村長の許可が必要な、特別な場所
ナリーニョ県は、かつてゲリラ活動が活発だった地域であり、現在でもアポンテを訪れるには村長の許可が必要です。
部のバイヤーやインポーターが直接この村を訪れることは非常に稀で、私たちの訪問も、村の中では大きな出来事として受け止められました。
滞在中は、村長の娘さんのご自宅を拠点とし、IKAWAやサンプル脱穀機を持ち込んで、村の生産者たちのコーヒーをひとつずつ丁寧にカッピングしました。
生産者たちは、自らのコーヒーをとても誇りに思っており、私たちに熱心にプレゼンテーションをしてくれたのが印象的でした。

アポンテのコーヒーに込めた想い
アポンテで出会ったコーヒーは、まだまだその可能性を秘めています。
標高から生まれる複雑な酸やクリアなフレーバーに加え、プロセスを工夫することでさらなる品質向上が見込めます。
私たちは今後も、現地の生産者と共に品質を高め、アポンテのコーヒーにさらなる価値を与えていきたいと考えています。インポーターとして単にコーヒーを取引するだけでなく、こうした現地との関係性を築きながら、持続可能で意味のある仕事を目指しています。
アポンテは、まさに私たちの哲学そのものを体現している場所。ここでの取り組みは、私たちのコーヒーに対する姿勢そのものであり、今後もこの地と共に歩んでいきたいと思います。