今期の買い付けを振り返ると、コロンビアコーヒー産業が大きな転換点に立っていることを強く感じました。異常気象による収穫への影響、構造的な人手不足の問題、そしてそれに立ち向かう生産者たちの創意工夫。現地で見たもの、聞いたこと、そして私たちが今後取り組もうと考えていることを、できるだけそのままお伝えしたいと思います。

1. コロンビアの現状
2025年のコロンビアは、過去最大級の雨に見舞われました。
この異常気象により収穫が約1ヶ月遅れ、各地で地滑りが頻発。農園までの道路が寸断され、本来トラックで運ぶべきチェリーをバイクで運ばざるを得ない状況が続きました。
さらに深刻だったのは、コーヒーの木が丸ごと土砂に飲み込まれる被害が各地で報告されていたことです。
気候変動の足音は確実に聞こえていたものの、効果的なアクションを取れていないのが現状です。
現地で「気候変動」という言葉を口にする農園は驚くほど少なく、言葉だけでは何も変わらないという現実があります。
今必要なのは、別のコミュニケーションの仕方を模索し、迫りくる未来に対する具体的な対策を実行していくことだと感じています。
参考:現地の土砂崩れの様子
2. C Priceの影響
雨の影響で思うように収穫が進まない中、C Priceはピークだった3〜4月よりは下落したものの、5〜6月は需給バランスの問題で現場価格はあまり下がりませんでした。
供給不足が続く一方で、大手インポーターが3〜4月時点でリザーブしていたコーヒーが当時より高い価格で抑えられていたため、これも値下がりの鈍化要因となりました。
(その後、段階的に下落が進み、コロンビア最大の生産エリアであるHuilaでコーヒーの乾燥が完了するタイミングに合わせて価格調整が始まりました。)
3. コロンビアコーヒーが直面する課題
深刻化する人手不足
コロンビアも他国同様、人手不足と高齢化に直面しています。
World Barista Championship(WBrC)のコロンビア代表カルロス氏によると、農園で働く人の平均年齢は58歳。
この状況を踏まえ、私たちはできるだけ若い農園主との協働を重視し、若者の農園回帰をエンゲージしていきたいと考えています。
(私たちの体感としては、もう少し若く50歳弱の印象でした。一方で、ピッカーには若い人も多い印象があり、コロンビアでピッカーに支払う額は他の中米諸国と比較しても高水準にありました。)
機械化への高いハードル
コロンビアは急斜面にチェリーが実るケースが多く、機械化が困難です。
しかし、最近では、温暖化よりも人手不足の方が大きなイシューになると考え、ある程度未熟なチェリーは一気に収穫するスタイルになることを見越して、チェリー選別機械への投資を進める生産者も出てきました。
このような先行投資には、やはり「儲かる」という分かりやすいインセンティブが不可欠です。
4. 私たちの今後の取り組み
コロンビアでは毎日何十トンものコーヒーが輸出される中で、私たちの存在はいまだ小さく、リソースも限られています。そんな中で「どこに石を投げれば大きな波が起こるのか」を探りながら歩んできました。
実際に今年から始まろうとしている具体的な取り組みが二つあります。それは、ドライミルの立ち上げと買付拠点の増設です。
ドライミルの立ち上げ
自社でのドライミルは、豆それぞれのトレーサビリティを担保し、ロースターにとっても生産者にとっても効果的なフィードバックと持続的な関係構築をもたらします。また出荷の効率化を実現し、生産者にとっても私たちにとってもより優れたキャッシュフローの実現も目指すことができ、試行錯誤のスピードを上げより良いサービスの提供を目指します。
買付拠点の増設
買い付け拠点を複数持つことで、よりダイレクトに生産者からの買い付けを実現できます。生産者への還元を担保しつつ、ロースターさんへの低価格化も可能になります。つまり、ダイレクトトレードのメリットをさらに広げ、持続的に届けられる仕組みをつくることができます。
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激変する環境の中でも、コロンビアの生産者たちは粘り強くコーヒー作りを続けています。
私たちもパートナーとして、共により良い未来を築いていくため、現地に深く根ざした取り組みを続けていきます。
こうした現地の状況や生産者たちの想いを背景に、今回も特に品質と個性にこだわって豆を選定しました。土砂崩れや収穫の遅れという困難な状況下でも、妥協することなく素晴らしいコーヒーを作り続ける生産者たちの情熱が詰まった、選りすぐりのコーヒーばかりです。
ぜひ一杯一杯に込められたストーリーと共に、コロンビアの今を感じていただけましたら幸いです。